DFLの参考資料

DFLについての資料をアドホックに紹介します。

(1)JIS規格

パレット等のサイズ、梱包サイズには各種規格があります。
ただし、強制力があるわけではないため、あまり普及していないものもあります。

JIS Z 0650 ユニットロードシステム通則
JIS Z 0161 ユニットロード寸法 ※特に重要
JIS Z 0105 包装貨物-包装モジュール寸法
JIS D 4002 トラック荷台の内のり寸法

(2)ガイドライン

■カートンケース標準化マニュアル(国交省)
タイトルがわかりにくいですが、包装モジュール寸法のガイドラインに相当するもの。

https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu02_hh_000027.html

■加工食品分野における物流標準化アクションプラン
 および加工食品における外装サイズガイドライン

https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000500.html
https://www.jpi.or.jp/info/data/guideline20210415.pdf

■物流を考慮した建築物の設計・運用手引き
建築設計における物流配慮の「ガイドライン」。
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000110.html

DFLとは(定義等)

(1)諸文献における定義

DFLという言葉は通常、物流効率を左右する製品や包装サイズの設計の改善を指して使われることが多いですが、文献によってはより幅広い内容を含めるものも見られます。

例えば英語版wikipediaでは、包装設計、標準化のほか、製造プロセスの並列処理といった事項が例示されています。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Design_for_logistics

また、DFLについてまとまった記述のある数少ない文献である、「サプライ・チェインの設計と管理」(Dスミチ・レビ他著、久保幹雄監修、朝倉書店)では、以下のような項目が挙げられています(抜粋)。
  ①経済的な包装と輸送
  ②同時処理と平行処理
  ③遅延差別化
詳しくは文献を参照頂きたいですが、②の「同時・並列処理」とは、シーケンシャルな処理を複数の並列工程に分解することで、生産から出荷のリードタイムを短縮するといった意味です。加工組み立て産業では、複数のモジュールに分解して生産することをイメージすれば良いでしょう。また③の遅延差別化は、商品のバリエーションごとの分岐点を、生産工程の後のほうに持ってくるというような主旨です。これらの取り組みが出荷リードタイムを削減し、仕掛品在庫を減らす等のうえで効果があることは明確でしょう。

②、③は製品のいわゆる「デザイン」というよりは、製造プロセスそのものの改善に関わる内容だとも言えますが、これは、DFLは元々は製造性に配慮した設計を指す、DFM(Design for manufacturability)からの類推で生み出された概念であることと関係します。諸外国の文献では特に、製造プロセスの設計(デザイン)における物流配慮が、DFLの一つの焦点となっています。

一方、「在庫を減らす」といった観点で言えば、「商品アイテム数自体を減らす」「商品の改廃を減らす」といった取り組みも重要ですが、このような製品企画・販売プロセス関連の事項をDFLに含める用例はほとんど見当たりません。この点は上記の経緯を踏まえると理解できないではないですが、「物流配慮」といった場合に、どの領域の「デザイン」までDFLに含めるかはかなり流動的だとも言えます。
今のところは文献によって定義に幅があり、また、国内産業界での用法との乖離も見られるのが実情です。

(2)より広義でのDFL

物流への配慮という観点では、製造物に限らず、建築物等の「デザイン」も重要です。実際、国交省では「物流を考慮した建築物の設計・運用」の指針を公表していまが、ここでもDFLへ言及されています。
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000110.html

物流は社会システムであり、道路、物流拠点、住宅等の「デザイン」が物流効率を左右します。
(参考)貨物形状の変化に対応したロジスティクス改革
また、東京港で荷揚げされた貨物の少なくない比率が、いったん内陸部の物流拠点に横持ちされているといった実情を見ると、都市計画・国土計画という「デザイン」も、物流効率を決定的に左右すると言えるでしょう。

このような点をどこまでDFLに含めるか、という点についても明確なコンセンサスはありません。その点でもDFLの定義は流動的だと言えるでしょう。

(3)実務的な定義

以上のとおり、現段階ではDFLについては明確な定義は確立されていませんが、DFLの取り組みは実務ベースではかなり進展しています。企業が実務的に取り組んでいる内容をDFLだと捉え、整理すると、概ね下記のような事項に集約することができ、この点についてはあまり異論の余地はありません。

①容積効率・空間効率(製品自体や容器)

製品自体や容器の設計等によって、包装に占める空間効率等を高める。

②容積効率・空間効率(梱包とユニットロード)

製品の容器・梱包等と、パレット等(トラック荷台、コンテナ等を含む)のユニットロードサイズとを適合させることで、ユニットロード等に占める空間効率を高める。

③品質保持

製品の品質保持に資する梱包等を採用する。または逆に、簡易な梱包でも品質保持できるような瀬品の設計等を採用する。

④作業性配慮

物流の作業性を配慮した梱包等の設計とする。具体的には、表示、ケアマーク、視認性、重量等の各観点で配慮する。

⑤自動化への適合

ロボット等の物流現場への自動化への適合性を配慮した梱包等の設計とする。梱包強度のほか、自動認識システムで対応可能な文字・表示等を含む。

⑥後工程の物流への配慮

自社から出荷した後、顧客のなかの物流工程の効率性を配慮する。「梱包の開けやすさ」「捨てやすさ」といった点のほか、「シェルフ・レディ・パッケージ(※)」といった、店舗内オペレーションの効率化も重視される。
※梱包箱のまま展示販売できるなど、店頭でそのまま利用可能な梱包(の工夫)。

⑦製品企画・開発・管理プロセス

上記のようなDFLの取り組みを可能とするための、社内プロセスの確立。設計のレビューの仕組みのほか、問題点のフィードバックの仕組み、KPI管理や人材育成等。

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分類方法や範囲については議論が必要ではありますが、実務上の必要性から取り組まれている手法自体はある程度確立されて来ていることも事実です。

なお、実務事例についてもまとまった文献は少ないですが、月刊ロジビズ2012年7月号「特集 物流主導の包装改革」は有用です。
https://magazine.logi-biz.com/backnumber/2012_07.html

以上のような取り組みについて、実施状況を今後紹介します。

書籍「『物流コストの算定・管理』のすべて」出版のおしらせ

この度、「物流コストの算定・管理」をテーマとした書籍を出版する運びとなりました。
Amazonほかで発売しておりますので、ご参照していただければ幸いです。
内容としては、荷主企業における物流コストの算定手法を中心に、実務ベースの内容を紹介しています。

「物流コスト」は重要な課題でありながら、テーマ的にニッチであるためか、簡単に入手できるものは不正確な情報がおおく、ウェブでは正確な情報を得ることが困難です。荷主の皆様に参考にしていただければ幸いです。

タイトル:コスト激増時代必須のマネジメント手法
     「物流コストの算定・管理」のすべて
著 者:久保田精一※1・浜崎章洋※2・上村聖※3
    ※1:サプライチェーン・ロジスティクス研究所 代表、城西大学 非常勤講師
    ※2:大阪産業大学 経営学部 教授
    ※3:城西大学 経営学部 教授
発 行:株式会社創成社
発行日:2021年8月
  主要ネット書店、大型書店で販売中
  アマゾンは・・
  www.amazon.co.jp/dp/4794425899/

ISBN:978-4-7944-2558-4
定価:2500円+税
ページ数:約200ページ
目次:はじめに
   第1章:みんなに理解して欲しい「物流コスト」の意義
   第2章:物流担当者が知っておくべき「物流コスト」の知識
   第3章:事業担当役員に理解してほしい物流コスト
   第4章:物流コスト算定・管理の実際
   第5章:物流コスト管理のためのフォーマット
   さいごに

セミナー等実績まとめ

企業・業界向けのセミナーとしては、「物流コスト」「物流KPI」「トラック運送業の経営改善・生産性向上」「トラック運賃」「物流入門」等をテーマとして実施しています。
セミナーの主な実施主体としては、業界団体(トラック協会、日本物流団体連合会等)、国関係機関(中小企業大学校等)、自治体(ポートセールスセミナー等)、物流業界の企業・コンサルタント等が挙げられます。

【執筆・講演等実績(ウェブ上に公開されているもの、一部)】
・荷主・物流事業者における物流コスト管理
http://lnews.jp/2017/02/j021501.html
http://jils.force.com/StudyDetail?productid=a0R100000061De9EAE
http://www.seino.co.jp/sis/seminar/15c0123/

・荷主・物流事業者におけるKPIの導入および活用
http://www.logi-today.com/237429(コーディネータとして)
http://jils.force.com/LectureDetail?productid=a0R10000009tmV2EAI

・国際物流・港湾活性化・コンテナラウンドユース
熊本県ポートセールスセミナー
福島県小名浜港利用促進協議会熊本県

・中小企業大学校「利益を生み出す業務改革・トラック運送業」講師(2017~)
https://www.smrj.go.jp/institute/sanjyo/training/sme/2018/frr94k000000fsr9.html
 ほか(最新情報は https://www.smrj.go.jp/index.html をご参照ください)

執筆・寄稿等の実績まとめ

【書籍】

■ビジネス・キャリア検定試験 標準テキスト(中央職業能力開発協会、発行)
 「ロジスティクス管理2級」「ロジスティクス管理3級」
 監修:苦瀬博仁、梶田ひかる
 ※分担執筆

■ケースで読み解く経営戦略論(八千代出版)
 編著:草野素雄、上村聖
 第7章 物流業の経営戦略とイノベーション 執筆
 ※トランコム株式会社の経営戦略を取り上げたものです。
  執筆に当たってご協力頂いた同社関係者に御礼申し上げます。

■「物流コストの算定・管理」のすべて(創成社)2021年8月刊
 共著:久保田精一、浜崎章洋、上村聖
 
【雑誌・新聞等】
■月刊マテリアルフロー(流通研究社)
(連載)「LOGI裏の統計学」2021年4月~
 2021年4月「物流不動産・倉庫」ほか 継続中

■流通ネットワーキング(日本工業出版)
(連載)「人手不足と運賃高騰時代の物流効率化策」
 2014年~計6回 ※終了済み
「物流総合効率化法(物効法)が物流拠点整備に与えた効果とは」2021年7・8月号
「トラック運送業の人手不足対策と従業員満足度(ES)調査」2020年9・10月号
「物流業における安全対策の基本的な進め方」2020年1・2月号
「アメリカの事例から考える働き方改革の影響」2019年3・4月号
「荷主は物流コスト上昇にどう向き合うべきか」2018年7・8月号 ほか

■輸送経済新聞社
「標準運賃を踏まえた運送事業者の対応」2020年
 https://sa746767.sixcore.jp/11316
「トラックの生産性向上」2017年
 https://sa746767.sixcore.jp/8163
 ほか

■ロジスティクスレビュー(サカタウエアハウス) ※主要なもの
「第458号 物流施設は建てすぎなのか?(2021年4月20日発行)」
 https://www.sakata.co.jp/logistics-458/
「第411号 トラック会社の運賃交渉、値上げ交渉の進め方(2019年5月9日発行)」
 https://www.sakata.co.jp/logistics-411/
「第407号 宅配危機は物流コスト上昇につながるか?(2019年3月7日発行)」
 https://www.sakata.co.jp/logistics-407//
 ほか

■月刊ロジスティクスビジネス
「物流KPI」
 http://www.logi-biz.com/backnumber/2016_01.html

■流通経済大学「物流問題研究」
「諸外国におけるトラックドライバーに対する新型コロナウイルス感染症に関する政策」
 https://log-innovation.rku.ac.jp/laboratory/pdf/distribution69_5.pdf

■荷主と輸送(オーシャンコマース)
(連載)「改めて学び直すドレージ輸送」
 2017年、終了済み

ドレージ輸送とは

ドレージ(drayage)輸送とは、国際海上コンテナなどの貨物を、トラクターヘッドおよびシャーシを用いてトラック輸送することです。

業法(貨物自動車運送事業法)上は、一般の自動車貨物運送事業(いわゆる普通のトラック運送会社)と差はありませんが、次のような点から特異な事業形態を有しています。

1)輸出入取引に組み込まれていること
 通常のトラック運送は、荷主(メーカー等)とトラック会社との相対での輸送契約によるものが主ですが、ドレージ輸送については、フォワーダ(取次業者、貨物利用運送事業者)や商社に一括して委託しているケースが一般的です。輸出入物流では、海運、通関、港湾運送(港湾内での荷下ろし・積み込みやコンテナの移動など)、ドレージといった様々なオペレーションが発生しますが、それぞれの手配を荷主企業が自社内で行うのは非常に難しいのが現実です。そのため、専門の会社に一括して委託するのが一般的となっています(ただし、大メーカーなどでは、自社の物流子会社がこれらの手配まで行っているケースはあります)。
 そのため、ドレージ輸送会社は、荷主と直接の契約ではなく、商社やフォワーダの傘下で、半ば専属的に活動している企業が少なくありません。特に地方港では、港湾運送会社の数が限られていることもあり、港湾運送会社系のドレージ会社が大きなシェアを占めているケースが多く見られます。

2)道路法等の通行規制の問題
 国内の道路を通行できる車両は、道路法(車両制限令)、道路交通法(警察)、道路運送車両法保安基準(トラック輸送に関する規制)などで規制されていますが、フルに積載された国際海上コンテナは、通常は一般の道路を走行できず、例外措置により通行が許可されている状況です。
 具体的には、道路法上の規定により、道路管理者に対し、通行ルートを特定したうえで「特殊車両通行許可申請」を行うことが求められています。道路管理者は市道・県道・国道などでバラバラですので、申請は必ずしも簡単ではありません(国では簡素化の取り組みを続けていますが)。
 また、海上コンテナは、ドライバーがコンテナを開けて中身をみることができないため、偏加重、重量超過による事故の防止も課題とされています。そのために国のガイドラインなども策定されています。

3)港湾の渋滞の問題・港湾のゲートオープン時間の問題
 過去20年ほどの間に輸出入物流量が劇的に増加していますが、港のキャパシティが追いついていないのが実情です。特に京浜港(東京・川崎・横浜)については、港湾の物理的狭さの問題もあって渋滞が激化しており、コンテナヤードからコンテナをピックアップするための所用時間が非常に長くなっています(なお、これは道路の渋滞問題と混同されがちですが、あくまでもコンテナヤード内が混雑しているために、コンテナヤードのゲート前でトラックが待たされている、というのが実情かと思われます)。
 そのため、ドレージ輸送は一日の半分程度が港湾周辺での待機に費やされているといったケースも生じているほどです。
 また、現状では港湾(コンテナヤードのゲート)は24時間開いているわけではなく、ヤードにより異なりますが、たとえば4時半などの時間までにゲート前に並ばないと、当日にコンテナをピックアップすることはできません。
 ドレージ会社としては、ゲートオープン時間に合わせて運行せざるをえない状況にあるため、輸送効率を上げるのが非常に難しくなってきます。

 その他、料金体系の問題など色々とありますので、こちらで紹介していきたいと思います。